仕入れ商品を扱うネットショップにとって、「いつ・いくつ発注するか」は売上と資金繰りの両方に直結する判断です。在庫を切らせば販売機会を失い、Amazonでは検索順位にも悪影響が出ます。かといって多く仕入れすぎれば、資金が在庫に変わったまま動かなくなります。
筆者はAmazon・楽天・メルカリShops・自社ECの4店舗を運営しており、発注判断のやり方を「目視」から「数字」へ、さらに一部は自動化へと段階的に変えてきました。この記事では、その過程で固まった発注の考え方を紹介します。
発注判断の基本は「販売ペース × 入荷までの日数」
発注のタイミングを決める考え方は、突き詰めると1つです。
「入荷を待っている間に売れる数」より在庫が少なくなる前に発注する。
たとえば1日2個売れる商品で、発注から入荷まで3日かかるなら、入荷待ちの間に約6個売れます。在庫が6個+余裕分を切る前に発注しないと、届く前に在庫が尽きる計算になります。
つまり発注判断に必要な数字は、次の2つだけです。
- 販売ペース:その商品が1日(または1週間)に何個売れているか
- リードタイム:発注してから商品が手元に届くまでの日数
筆者の主要な仕入先は発注から2〜3日で届くため、比較的短いサイクルで回せています。仕入先によっては1〜2週間かかることもあるので、まず自分の仕入先ごとのリードタイムを把握することが出発点です。
最初は「売れたレポート」を見るだけでいい
発注管理と聞くと専用ツールを想像するかもしれませんが、最初から必要ありません。筆者も長い間、目視と手作業でやってきました。
具体的には、Amazonのセラーセントラルから注文レポートをダウンロードし、商品ごとに「この期間で何個売れたか」を数字で確認してから発注数を決める、という方法です。感覚ではなく、実際に売れた数を根拠にする。これだけで発注の精度は大きく変わります。
楽天やその他の店舗でも同様に、管理画面から売上データは取得できます。複数店舗で同じ商品を売っている場合は、全店舗の合計販売数で判断してください。1店舗分だけ見て発注すると、確実に足りなくなります。
支払い条件によって発注タイミングは変わる
発注タイミングは在庫の残りだけで決まるわけではありません。仕入先との支払い条件も大きく影響します。
筆者の場合、掛け払い(月末締め・翌月末払い)で取引しているメーカーには、月初にまとめて発注することが多いです。月初に仕入れれば、支払いはほぼ2ヶ月先。商品が売れてから支払う流れを作りやすく、資金繰りが楽になります。
一方、都度払いの仕入先や、リードタイムが短い仕入先は、在庫の減り具合を見ながら必要な分だけこまめに発注します。
「掛け払いの仕入先は締め日を意識してまとめる」「都度払いは小刻みに」という使い分けは、資金の少ない立ち上げ期ほど効いてきます。
筆者がやってきた失敗:発注しすぎと商品間違い
目視・手作業の時代には、それなりに失敗もしました。代表的なのは次の2つです。
発注しすぎ
「よく売れているから」と勢いで多めに発注した結果、販売ペースが落ちて在庫が滞留するパターンです。売れ筋ほど油断して多く積みがちですが、直近の販売ペースが今後も続く保証はありません。特に季節要因で売れていた商品は、ピークを過ぎると一気に減速します。
商品間違い
型番やサイズ違いの商品を発注してしまうミスです。似た品番が並ぶ商材では起こりやすく、届いてから気づくと返品交渉や不良在庫化の手間が発生します。発注前に「発注書の品番と、売れている商品の品番が一致しているか」を指差し確認するだけでも防げます。
現在は販売データをもとに発注候補リストを自動で作る仕組みに移行し、こうしたミスは減りました。ただし、最終的に「発注する」と決めるのは人間の判断に残しています。数字は判断材料であって、判断そのものを機械任せにはしない。これは今も守っているルールです。
セール前の「増し発注」はケースバイケース
楽天のセールやAmazonのセール期間前に在庫を厚くするかどうかは、よく聞かれるテーマですが、筆者の答えは「商品による」です。
判断の目安は次のとおりです。
- 過去のセールで実際に伸びた実績がある商品:増し発注を検討する
- セールでも普段と変わらない商品:通常どおりの発注でよい
- リードタイムが短い(2〜3日)仕入先の商品:セール中に追加発注で間に合うことも多く、無理に積まない
「セールだから全商品を厚めに」という発注は、終わった後の滞留在庫を生みやすい典型パターンです。増やすなら、過去実績のある商品に絞るのが安全です。
まとめ:感覚の発注から数字の発注へ
発注のタイミングと数量は、次の順番で精度を上げていくのが現実的です。
- 仕入先ごとのリードタイムを把握する
- 売上レポートで販売ペースを数字で確認してから発注する
- 支払い条件(締め日・支払日)に合わせて発注タイミングを整える
- 慣れてきたら、発注候補の洗い出しを仕組み化する
最初から完璧な仕組みは要りません。「感覚で発注しない。売れた数を見てから決める」。まずはこれだけで、在庫切れと過剰在庫の多くは防げます。

