結論から言えば、ネットショップの在庫管理は「販売する店舗の数」で方法を変えるのが基本です。1店舗ならエクセルでも回りますが、2店舗以上で同じ在庫を売るなら、在庫連携システムを使わない限り売り越しは防げません。
筆者は現在、Amazon・楽天・メルカリShops・自社ECの4店舗を運営しています。Amazonだけで販売していた頃はエクセルで在庫を管理しており、売り越しを何度も起こしました。この記事では、その経験から段階別の在庫管理方法をまとめます。
ECの在庫管理とは?
ECの在庫管理とは、手元にある商品の数と、各ショップに表示している在庫数を一致させ続けることです。
実店舗なら棚を見れば在庫が分かりますが、ネットショップでは「実際の在庫」と「ショップ上の在庫表示」が別々に存在します。この2つがズレると、次のどちらかが起こります。
- 売り越し:実際には在庫がないのに、ショップ上では在庫ありと表示され、注文が入ってしまう
- 機会損失:実際には在庫があるのに、ショップ上では在庫切れと表示され、売れるはずの注文を逃す
在庫管理の目的は、このズレを最小限に抑えることです。
在庫管理の方法は?店舗数に合わせた3段階
管理方法は、販売している店舗の数と商品数に合わせて段階的に変えていくのが現実的です。
段階1:エクセル・スプレッドシートで管理(1店舗・商品数が少ない)
商品ごとの在庫数を表で管理し、入荷と出荷のたびに手で数字を更新する方法です。費用がかからず、すぐに始められます。
筆者もAmazonだけで販売していた時期は、エクセルで在庫を管理していました。1店舗であれば、ショップの管理画面自体が在庫数を持っているため、エクセルは入荷・発注の記録として使う形になります。
段階2:各ショップの管理画面で個別に管理(2店舗・商品数が少ない)
店舗が増えると、各ショップの管理画面で在庫数をそれぞれ更新する必要が出てきます。ここから売り越しのリスクが一気に高まります。楽天で売れた商品の在庫をAmazon側でも減らす、という作業を毎回手でやらなければならないからです。
段階3:在庫連携システムで一元管理(2店舗以上・商品数が多い)
在庫連携システムは、1つの在庫数を複数のショップに自動で反映させる仕組みです。どこかの店舗で売れると、他の店舗の在庫数も自動で減ります。手作業での更新が不要になり、売り越しは大幅に減ります。
筆者が実際に使っている在庫連携システムの運用は在庫連携の実務で詳しく書いています。
売り越しはなぜ起きるのか?
売り越しの原因は、ほとんどが「在庫数の更新が、注文のスピードに追いつかない」ことです。
エクセル管理の時代、筆者は売り越しを何度も起こしました。典型的なパターンは次のとおりです。
- 在庫が残り1個の商品に、ほぼ同時に2件の注文が入る
- 入荷した商品の登録が遅れ、管理表と実物の数が合わなくなる
- 返品や破損で在庫が変動したのに、表の数字を直し忘れる
どれも「人が数字を手で直す」ことに起因しています。手作業である限り、更新漏れや遅れはゼロにできません。店舗や商品が増えるほど、この確率は上がっていきます。
在庫連携システムを導入してからは、売り越しはほとんど起きなくなりました。システムが注文を検知して各店舗の在庫を自動で更新するため、人の更新作業そのものがなくなったからです。
在庫連携システムはいつ導入すべき?
目安は「2つ目の店舗で同じ商品を売り始めるとき」です。
1店舗の段階では、ショップの管理画面が在庫を管理してくれるため、システムはなくても困りません。しかし同じ在庫を2店舗で売り始めた瞬間から、手作業での在庫更新が発生します。この時点で導入を検討するのが、売り越しを経験する前に手を打てるタイミングです。
導入の判断では、月額費用と「売り越し1件あたりの損失」を比べると分かりやすくなります。売り越しが起きると、注文のキャンセル対応、購入者への謝罪連絡、そしてショップの評価低下が発生します。特にAmazonでは、出荷前のキャンセルがアカウントの健全性を示す指標に影響します。アカウント評価のリスクについてはAmazonアカウント停止の実体験も参考にしてください。
棚卸しはどのくらいの頻度でやるべき?
筆者は3ヶ月に1回、システム上の在庫数と実際の商品数を照合する棚卸しを行っています。
在庫連携システムを入れても、棚卸しは必要です。システムが管理しているのは「注文と入荷の記録から計算した数字」であり、次のような変動は自動では反映されないからです。
- 梱包時の破損や汚損
- 誤出荷(違う商品や数を送ってしまった)
- 返品された商品の状態確認漏れ
こうした小さなズレは、放置すると積み重なります。定期的に実物を数えてシステムの数字を正しい値に戻すことで、在庫の精度が保たれます。
頻度は商品数と回転の速さで調整してください。商品数が少なければ3ヶ月に1回でも十分ですが、回転が速い商材や、誤出荷が起きやすい似た商品が多い場合は、頻度を上げた方が安全です。発注とあわせた在庫の考え方は発注のタイミングと数量の決め方にまとめています。
よくある質問
Q. エクセルの在庫管理はいつまで通用しますか?
A. 1店舗で販売している間です。1店舗なら、ショップの管理画面が在庫を持っているため、エクセルは入荷と発注の記録として十分に機能します。複数の店舗で同じ商品を売り始めたら、エクセルでの管理は限界を迎えます。
Q. 売り越してしまったら、どう対応すればいいですか?
A. 気づいた時点で、すぐに購入者へ連絡することが最優先です。再入荷の見込みがあれば発送日を伝え、見込みがなければ謝罪の上でキャンセルします。連絡が遅れるほど、購入者の不満とショップ評価への影響は大きくなります。あわせて、売り越しが起きた原因(更新漏れ、同時注文など)を記録し、同じことが起きない仕組みを考えてください。
Q. 在庫連携システムを入れれば、在庫管理の作業はなくなりますか?
A. なくなりません。日々の在庫更新作業はなくなりますが、棚卸しと入荷時の登録は残ります。システムは記録された数字をもとに動くため、入荷した商品を正しく登録しないと、システム上の在庫も正しくなりません。「更新を自動化する仕組み」であって、「在庫を見なくてよくなる仕組み」ではないと考えてください。
まとめ:店舗が増えたら、手作業をやめる
- ECの在庫管理は、実際の在庫とショップ上の表示を一致させ続けること
- 1店舗ならエクセルで回る。2店舗以上で同じ在庫を売るなら在庫連携システムが必要
- 売り越しの原因は「人が手で数字を直す」こと。手作業である限りゼロにはできない
- 導入の目安は、2つ目の店舗で同じ商品を売り始めるとき
- システムを入れても棚卸しは必要。筆者は3ヶ月に1回、実物とシステムの数字を照合している
在庫管理は地味な作業ですが、売り越し1件で失う信頼は大きいものです。店舗が増えるタイミングで、手作業から仕組みへ切り替えることをおすすめします。

